製図の授業で平面図を描くとき、最初に引くのが「通り芯」です。
たった数本の細い線ですが、ここがずれると壁も柱も寸法も、全部ずれます。逆に、通り芯さえ正しく引ければ、あとの作業はずっと楽になります。
私はとある設計時、通り芯の描く位置をミスってしまって描き直しになったことがあります…
この記事では、木造2階建ての家を1軒使って、通り芯の決め方から引き方、符号の振り方、ほかの図面とのつながりまでまとめました。「結局、壁の真ん中?柱の真ん中?」と迷っている人は、この1本でスッキリするはずです。
この記事を読むとわかること
- 通り芯とは何か、柱芯・壁芯との違い
- 通り芯をどこに置くか(スパンとモジュール)
- 線の種類、符号の振り方、丸の大きさなどのルール
- 実例で学ぶ、通り芯の引き方6ステップ
- 立面図・断面図、現場での通り芯の使われ方
この記事で題材にするのは、次の木造2階建ての家です。間口9,100mm、奥行き7,280mm。平面図・立面図・断面図の記事と同じ家なので、あわせて読むとつながりがよくわかります。

平面図全体の描き方は、こちらの記事で順番にまとめています。

通り芯とは?
通り芯(とおりしん)とは、柱や壁の中心を通る、建物の基準線のことです。縦と横に特別な線を引いて、それぞれに「X1」「Y2」のような名前(符号)を付けます。
壁も柱も窓も、すべてこの線を基準に位置を決めます。だから通り芯は、図面の中で一番最初に引く線なんです。
通り芯は「建物の住所」
通り芯に名前が付いていると、建物の中の場所を一言で言えるようになります。
たとえば題材の家なら、階段の位置は「X2〜X3、Y2〜Y3の間」です。「左から2番目の部屋の奥の……」と説明するより、ずっと正確ですよね。
地図の「住所」や、将棋盤の「7六歩」と同じ発想です。設計者も構造の担当者も現場の職人さんも、全員がこの住所で話をします。

柱芯・壁芯・通り芯の違い
「芯」の付く言葉は3つあって、最初は混乱しがちです。違いは「何の中心か」だけです。
| 言葉 | 何の中心か | 主に使う場面 |
|---|---|---|
| 柱芯 | 柱の中心 | 柱の位置を決めるとき |
| 壁芯 | 壁の厚みの中心 | 壁を描くとき、面積を計算するとき |
| 通り芯 | 建物全体の基準線(多くは柱芯・壁芯と重なる) | すべての図面で位置を示すとき |
木造の住宅では、柱芯・壁芯・通り芯がほぼ同じ線になることがほとんどです。だから最初のうちは「通り芯=柱や壁の真ん中を通る線」と覚えてOKです。
ただし、壁の厚さが途中で変わる場合や、RC造で外壁の面をそろえる場合などは、壁芯が通り芯からずれることもあります。そのときの書き方は、後のQ&Aで紹介します。
柱芯・壁芯と面積の関係は、こちらで詳しくまとめています。
通り芯の決め方
通り芯は「どこに柱や壁を立てるか」で決まります。線を引く前に、まず位置を決めるのが先です。
課題では敷地や条件が与えられ、自分で間取りを考えることも多いはずです。そのときは、次の2つの視点で通り芯を置いていきます。
柱・耐力壁の位置から決める
通り芯は、建物を支える柱や壁が並ぶ線に引きます。外壁の線と、建物の中を仕切る主な壁の線が候補です。
ここで大事なのは、1階と2階で同じ通り芯を使うことです。上の階の柱や壁は、下の階の同じ位置で受けるのが基本だからです。
「2階の間取りを先に決めたら、1階と通り芯が合わなかった」というのはよくある失敗です。通り芯は全部の階を重ねて考えるのを強くおすすめします!
部屋の大きさからスパンを決める
通り芯と通り芯の間隔を「スパン」といいます。スパンは、その間に入れたい部屋の大きさから逆算します。
題材の家のスパンは、次のようになっています。
| 通り芯の間 | スパン | 910の何倍か |
|---|---|---|
| X1〜X2 | 3,640mm | 4倍 |
| X2〜X3 | 2,730mm | 3倍 |
| X3〜X4 | 2,730mm | 3倍 |
| Y1〜Y2 | 3,640mm | 4倍 |
| Y2〜Y3 | 3,640mm | 4倍 |
| 全体 | 間口9,100mm・奥行き7,280mm | 10倍・8倍 |
どの数字も910で割り切れますよね。これが「モジュール」という考え方です。
設計でもモジュールという考え方はよく使えます!例として、トイレは横910×縦1820と設計するとちょうどいいサイズで設計でき、収まりも良いです。設計は収まりと丁度いいサイズ感を大切にする必要があります。
3,640×3,640の区画なら、8畳の部屋がちょうど入ります。2,730×3,640なら6畳です。このように、「何畳の部屋をどこに置きたいか」からスパンを決めると迷いません。

倍数といってもよく見られるのは910や1000です。910、1820・・・・か1000、2000・・・・ですね。
910と1,000のどちらを選ぶと間取りがどう変わるかは、こちらでまとめています。
通り芯のルール
通り芯には、「線の種類」「符号の振り方」「丸の大きさと位置」「寸法の測り方」の4つのルールがあります。どれも採点で見られやすいところなので、一つずつ押さえましょう。
線は一点鎖線の細線
通り芯は「一点鎖線(いってんさせん)」で引きます。長い線と短い点を交互に繰り返す、「― ・ ― ・ ―」のような線です。
太さは細線です。壁の断面を表す太い線より、はっきり細く引きます。ここが実線や太線になっていると、「線の使い分けができていない」と減点されやすいので要注意です!
一点鎖線はCADであればすぐに引くことが可能ですが、手書きだと時間はかかるし、綺麗な線を引くことは難しいです。定規で〇〇mm~〇〇mmの感覚ごとに線を引くと自分で決めてやると比較的綺麗に引けます!

そのほかの線の使い分けは、こちらにまとめています。
符号の振り方
通り芯には、横方向(X方向)と縦方向(Y方向)で別々の符号を付けます。順番は次のとおりです。
- X方向の符号:図面の左から右へ、X1・X2・X3……
- Y方向の符号:図面の下から上へ、Y1・Y2・Y3……
ここで混乱しやすいのが、「Xの線は縦線」という点です。X1・X2は左右に並んでいるので、線そのものは縦に引かれます。数学のX軸・Y軸を思い出すと、「X方向に並ぶ線」と覚えやすいです。
符号の付け方には、主に2つの方式があります。
| 方式 | X方向 | Y方向 | よく使われる場面 |
|---|---|---|---|
| X1・Y1方式 | X1・X2・X3 | Y1・Y2・Y3 | 木造の住宅、学校の課題 |
| 数字・アルファベット方式 | 1・2・3 | A・B・C | 規模の大きい建物、RC造など |
この記事では、平面図の記事と同じX1・Y1方式で描きます。どちらを使うかは、課題の指示や先生の指定に合わせてください。大事なのは、一つの図面の中で方式を混ぜないことです。
符号の丸の大きさと位置
符号は、通り芯の端に描いた丸の中に書きます。この記事では、次の寸法で描いています。数字はどれも用紙の上での長さです。
| 項目 | この記事での描き方 |
|---|---|
| 丸の直径 | 8〜10mm程度 |
| 丸の中の文字 | 丸に収まる大きさで、すべて同じ高さにそろえる |
| 丸を置く場所 | 外壁の外側で、寸法線よりさらに外側 |
| 丸を置く向き | Xは図面の下側、Yは左側(上や右にも付ける場合もある) |

丸の大きさがばらばらだと、それだけで図面が雑に見えます。手描きなら、円のテンプレート(丸を描くための定規)で同じ穴を使い続けるのがおすすめです。
寸法は通り芯から通り芯へ
通り芯の寸法は、通り芯の中心から次の通り芯の中心までを測ります。壁の外側や内側から測るのではありません。
芯々寸法(しんしんすんぽう)は、通り芯や壁芯の中心から中心までの寸法です。内法(うちのり)は、壁の内側の面から内側の面までの寸法です。たとえば芯々寸法3,640mmで壁の厚さが120mmなら、内法は3,640−120=3,520mmです。図面の通り芯の寸法は、芯々寸法で書きます。
通り芯の書き方|6ステップ
ここからは、題材の家を1/100でA3用紙に描くつもりで進めます。1/100なので、実際の3,640mmは用紙の上で36.4mmです。

最初に、建物が用紙のどこに入るかを計算します。いきなり線を引くと、寸法や符号を書く場所がなくなります。
| 項目 | 実際の寸法 | 用紙の上(1/100) |
|---|---|---|
| 間口(X1〜X4) | 9,100mm | 91mm |
| 奥行き(Y1〜Y3) | 7,280mm | 72.8mm |
| 寸法と符号の余白(片側) | ― | 約30mm |
| 必要な範囲(余白込み) | ― | 約151mm×133mm |
A3は420mm×297mmなので、十分に入ります。図名や方位記号のスペースも考えて、建物の位置を決めましょう。

左下の角になるX1とY1を、最初に1本ずつ引きます。この2本が、図面全体の「原点」になります。
この段階では、まだ一点鎖線にしなくて大丈夫です。薄い下書き線で引いておき、全部の位置が決まってから清書すると失敗しにくいです。

X1とY1からスパンを測って、残りの通り芯を引きます。ここでのコツは、「前の線から」ではなく「基準の線から」測ることです。
| 通り芯 | スパン | X1・Y1からの距離(用紙の上) |
|---|---|---|
| X2 | 3,640mm | 36.4mm |
| X3 | 2,730mm | 63.7mm |
| X4 | 2,730mm | 91.0mm |
| Y2 | 3,640mm | 36.4mm |
| Y3 | 3,640mm | 72.8mm |

前の線から毎回測ると、わずかなズレが少しずつたまっていきます。X1からの距離(累積)で測れば、最後のX4までずれません。
1/100で36.4mmや63.7mmを測るので、目盛りが1/100に合う三角スケールがあると、測り間違いが減ります。
全部の通り芯を一点鎖線で清書したら、端に丸と符号を入れます。線は丸の手前まで延ばし、丸の中には入れません。
Xは左からX1・X2・X3・X4、Yは下からY1・Y2・Y3です。番号を書き終えたら、向きが逆になっていないかを一度確認してください。

丸の大きさがそろっていないだけで、図面は雑に見えます。直径8〜10mmの穴がある円テンプレートを使えば、全部同じ大きさで描けます。
通り芯の寸法は、2段に分けて入れます。
- 内側の段:通り芯ごとの寸法(3,640・2,730・2,730)
- 外側の段:全体の寸法(9,100)
内側の段を足すと、外側の段と同じ数字になるはずです。ここが合わない図面は、提出前に必ず見直しましょう。
この記事では、外壁から内側の寸法線まで約10mm、内側と外側の寸法線の間を約8mmとしています。そのさらに外側に符号の丸を置きます。

寸法線や数字の置き方は、こちらで詳しくまとめています。
通り芯が引けたら、いよいよ壁です。壁は通り芯を中心に、両側へ半分ずつ厚みをつけます。壁の厚さが120mmなら、左右に60mmずつです。
壁から先の描き方は、平面図の記事で順番に解説しています。

CADで描く場合も、「基準の線から測る」「通り芯を先に引く」という考え方は同じです。ソフトごとの操作は、CADの解説記事でまとめています。
通り芯が引けたら、次は壁と寸法です。手順を本でも手元に置いておきたい人には、製図の基本をまとめた一冊があると安心です。
各図面での通り芯
通り芯は平面図だけのものではありません。立面図、断面図、矩計図でも、平面図と同じ符号の通り芯を使います。
たとえば、南側から見た立面図には、X1〜X4の通り芯が並びます。南北方向に切った断面図なら、Y1〜Y3が並びます。
| 図面 | 描く通り芯 | 何を確かめるのに使うか |
|---|---|---|
| 平面図 | XとYの両方 | 壁・柱・部屋の位置 |
| 立面図 | 見ている面に並ぶ方向だけ | 窓や玄関の位置、建物の端 |
| 断面図 | 切った方向に並ぶ通り芯 | 床・天井・屋根がどの壁の上に乗るか |
| 矩計図 | 切った位置の通り芯(1〜2本) | 壁の中の細かい寸法の基準 |
平面図で通り芯を正しく引いておけば、立面図や断面図はその線を「下ろす」だけで描き始められます。逆に、平面図と断面図で通り芯の位置が違うと、図面同士のつじつまが合いません。
提出前に、全部の図面で同じ符号・同じスパンになっているかを並べて確かめるのを強くおすすめします!

それぞれの図面での通り芯の使い方は、各記事で実際の描き方と一緒に紹介しています。



現場での通り芯(墨出し)
図面に引いた通り芯は、工事の現場でも実際に引かれます。この作業を「墨出し(すみだし)」といいます。
現場では、基礎のコンクリートなどに墨やマーカーで線を引き、その線を基準に柱や壁を立てていきます。図面の上の「住所」が、そのまま本物の建物の位置になるわけです。
現場でよく聞く言葉を、簡単にまとめました。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 墨出し | 図面の通り芯や寸法を、現場の床や壁に実際に写す作業 |
| 地墨(じずみ) | 床や基礎など、地面側に引く墨 |
| 逃げ墨(にげずみ) | 通り芯から一定の距離だけずらして引く墨。柱や壁で通り芯が隠れても位置を確かめられるようにする |
逃げ墨をどれだけずらすかは現場で決めます。よく使われるのは1,000mmなど、計算しやすい数字です。
学生のうちは墨出しをすることはほとんどないと思います。ただ、「自分が引いた通り芯をもとに、現場の人が建物を建てる」と意識すると、通り芯を丁寧に引く理由が実感できるはずです。
施工管理など現場の仕事に興味がある人は、こちらも参考にしてみてください。
通り芯でよくあるミス
通り芯のミスは、線自体は細くても、図面全体の評価に響きます。
- XとYが逆になっていない(Xは左右に並ぶ縦の線)
- 番号が左から右、下から上の順になっている
- 1階と2階で、通り芯の位置と符号が同じ
- 寸法が壁の外側ではなく、通り芯から測られている
- 通り芯ごとの寸法の合計が、全体の寸法と一致している
- 符号の丸の大きさがすべてそろっている
- 線が実線や太線ではなく、一点鎖線の細線になっている
- 平面図・立面図・断面図で、同じ符号を使っている
特に要注意なのが、1階と2階のずれです。平面図を階ごとに別の紙で描くと、通り芯の位置が少しずつ変わってしまうことがあります。上下の階を重ねて、通り芯が一致しているか確かめましょう。
よくあるミスを網羅!チェックリスト無料配布
よくあるミスや確認すべき項目を1枚にまとめました!iPadでも確認できるよう、PDFで配布します。ぜひご活用下さい!
通り芯のよくある質問
- 通り芯は壁の中心?それとも外側?
-
基本は壁や柱の中心です。壁の外側の面に引くのではありません。木造の住宅なら、「壁の真ん中=通り芯」と考えてほぼ間違いありません。
- 符号は数字だけでもいい?
-
「1・2・3」と「A・B・C」のように、縦と横で区別できれば問題ありません。ただし、縦も横も数字だけだと、どちらの方向の線か分からなくなります。課題で指定があれば、それに従いましょう。
- 通り芯からずれた壁や柱はどう書く?
-
一番近い通り芯からの距離を寸法で入れます。ずれた線が大事な場合は、「X2’」や「X2a」のような補助の通り芯を足すこともあります。通り芯を増やす前に、まず「ずらさずに済む間取りにできないか」を考えるのも大事です。
- 910と1,000、どちらで設計すればいい?
-
課題の指定があればそれに従います。指定がなければ、日本の木造住宅でなじみがある910から始めると、畳の大きさと結びつけて考えやすいです。1,000は廊下やトイレが広くなる代わりに、建物全体も大きくなります。
- 通り芯は英語で何という?
-
「grid line(グリッドライン)」です。海外の建築の図面や、英語版のCADソフトでもこの言葉が使われます。
まとめ
通り芯は、建物のすべての位置を決める「住所」です。最初に正しく引いておけば、壁も寸法も、ほかの図面も迷わずに描けます。
ポイントをもう一度まとめます。
- 通り芯は、柱や壁の中心を通る基準線
- 位置は、柱・壁の並びと部屋の大きさ(スパン)で決める
- 線は一点鎖線の細線、符号はXが左から右、Yが下から上
- スパンは前の線ではなく、基準の線から累積で測る
- 寸法は通り芯から通り芯へ、2段で入れる
- 立面図・断面図でも同じ符号を使う
通り芯が引けたら、次は壁と柱です。平面図の記事で、続きの描き方を順番に確かめてみてください。

図面の種類をまとめて知りたい人は、こちらもどうぞ。
意匠設計の仕事では、こうした図面を毎日のように扱います。仕事の中身は、特設サイトで紹介しています。


コメント