初めての製図課題で、真っ白なケント紙を前に「で、どこから描くの?」と固まった経験はありませんか。
ただえさえ自分の設計案を考えるだけで大変なのに図面ルールなんて考えてられないでしょう。
授業で平面図の見方は習っても、描く順番まで丁寧に教わる機会は意外と少ないんですよね。とりあえず外壁から描き始めて、途中で壁の位置がずれていることに気づき、消しゴムで紙がボロボロに……というのは、建築学生なら一度は通る道です。
平面図には、ちゃんと「この順番で描けば迷わない」という型があります。この記事では、その型を10ステップに分けてまとめました。
ただし、手書きとCADでは、同じ平面図でも描き方が少し変わります。描く順番の考え方は共通ですが、線の引き方や修正の仕方が違うので、違いがある部分にはそれぞれ注釈を入れています。

- 平面図を描く順番(通り芯から図名まで10ステップ)
- 線の太さや建具記号など、減点されやすいルール
- 手書きで描くときに紙を汚さないコツ
- CADで描く場合と手書きの違い
そもそも平面図とは?まず押さえたい「切る高さ」
平面図は、建物を床から1〜1.5mくらいの高さで水平に切って、真上から見下ろした図です。
この「切る高さ」を意識しておくと、あとで出てくる線の太さのルールがすっと理解できます。切った位置にある壁や柱は「切断面」なので太く描き、それより下に見えている床の段差や家具は「見えているだけ」なので細く描く。平面図の線の描き分けは、ほぼこの考え方だけで説明がつきます。
窓の高さもここで決まります。腰窓(床から90cmくらいの位置にある窓)は切断面にかかるので平面図に出てきますが、天井近くの高窓は切る高さより上にあるので、基本は描かないか破線で示します。

平面図で伝えるもの
平面図で読み手に伝えるのは、主に次の4つです。
- 部屋の配置と広さ
- 壁や柱の位置
- 窓・ドアの位置と開き方
- 人の動き(動線)
講評のときに先生が平面図を指でなぞりながら「ここから入って、ここで靴を脱いで……」と見ていくのは、この動線を確かめているからです。人目で何がどこに配置されるのかが分かるような図面を目指しましょう。
平面図の書き方の手順【10ステップ】
ここからが本題です。大きな流れは「骨組み→壁→穴あけ→中身→情報」の順。大きいものから小さいものへ、と覚えておくと迷いません。
手書きとCADで違うところ
10ステップに入る前に、手書きとCADで描き方が変わるポイントを整理しておきます。
| 項目 | 手書き | CAD |
|---|---|---|
| 線の引き方 | 薄い線で下書き → 濃い線で清書 | 最初から仕上がりの線で描く |
| 壁の描き方 | 通り芯から壁厚の半分ずつ測って線を引く | 通り芯を左右に複線(オフセット)する |
| 開口部 | 壁の線を消しゴムで消す | 壁の線を切断・部分消しする |
| 線の太さ | 芯の太さや筆圧で描き分ける | レイヤーや線種の設定で描き分ける |
| 修正 | 消して描き直す | 移動・伸縮で直せる |
手書きは「あとから直しにくいので、薄く描いて確かめてから清書する」、CADは「あとから直せるので、最初から正しい線で描いていく」と考えるとわかりやすいです。
また、図面はきれいな状態で提出するのが絶対条件です。鉛筆の粉で黒ずんでいたり、折れ曲がっていたりすると、それだけで受け取ってもらえない先生も少なくありません。
何時間もかけて描いた図面が、汚れや折れのせいで再提出になるのは本当につらいものです。汚さずに描くコツはこの記事の後半「手書きで平面図を書くときのコツ」で、図面の持ち運びや保管の方法は別の記事で紹介しているので、あわせて参考にしてください。 ※準備中
次に、壁の中心線(壁芯)を下書きし、そこから両側に振り分けて壁の厚みを描きます。1/100の課題なら、木造で120〜150mm、RC造で150〜200mmくらいが目安です。

【手書きの場合】 この段階では薄い線で描いておきます。濃い線で清書するのは、窓やドアの位置が決まった⑤以降です。
【CADの場合】 通り芯を壁厚の半分ずつ左右に複線(オフセット)すれば、そのまま仕上がりの壁線になります。下書きをする必要はありません。
※jwCADの場合は「2線」コマンドですぐに引けます。詳しい操作はCADソフトの操作記事を作成していますので、参照して下さい。※準備中
最初に引くのは壁ではなく、通り芯(とおりしん)です。通り芯は、柱や壁の中心を通る基準線のこと。一点鎖線で、縦横に引きます。

通り芯の端には丸を描いて、横方向にX1・X2…、縦方向にY1・Y2…のように番号を振ります。この時点では、まだ芯と芯の間隔(スパン)が正しいかだけに集中してください。ここがずれると、あとの全部がずれます。
通り芯の交点を中心に柱を描きます。木造なら105角や120角、RC造なら600角前後など、構造によってサイズが大きく変わるので、課題の条件を確認してから描いてください。※RC造の柱は断面をハッチングで塗りつぶして表すことが多いです。

窓やドアがつく位置の壁線を、いったん切ります。ここで初めて「壁に穴があく」イメージです。
手書きでは先程細い線のままかいたと思います。開口部として決めた場所は細いままにし、その他の部分を太い線になるようになぞって清書して下さい。

開口部の位置は、通り芯からの距離で決めるとずれにくくなります。目分量で描くと、あとで寸法線を入れたときに数字と図が合わなくなるので要注意です。
【CADの場合】 開口部の端に補助線を引き、その間の壁線を切断・部分消しで消すと、正確な位置で壁を切れます。
切った部分に建具を描き込みます。開き戸なら扉の線と開く軌跡の円弧、引き戸なら扉が重なる様子、窓ならサッシの線を描きます。
ドアはどちらに開くか(開き勝手)まで描くのがルールです。廊下側に開くドアは人とぶつかるので、講評で突っ込まれやすいポイントでもあります。

扉と言っても様々な種類があり、それによって描き方が異なります。
こちらの記事で紹介していますのでご覧ください。※準備中
階段は、踏面(ふみづら)の線を等間隔に引き、上り方向に矢印を描きます。切る高さより上の部分は描かず、斜めの破断線で区切るのが一般的です。
矢印の根元に「UP」や「上」と書くと、どちらに上るのかが一目でわかります。

キッチン、トイレ、浴槽などの設備と、ベッドやテーブルなどの家具を細線で描きます。
家具は省略しがちですが、描くことで「この部屋に本当にベッドが入るのか」を自分で確かめられます。部屋の広さを説明する一番わかりやすい材料にもなります。

【CADの場合】自分で作成しなくてもインターネットで無料でダウンロードできます。検索してみて下さい。
建物の外側に寸法線を入れます。内側から順に、開口部などの細かい寸法 → 通り芯間の寸法 → 全体の寸法と2〜3段に分けて描くと読みやすくなります。

単位はmmで、数字だけを書くのが基本です(「3640」のように書き、mmは付けません)。
課題の資料によっては、寸法がmやcm、尺で書かれていることもあります。mmへの換算に迷ったときは、こちらのツールで自動計算できるので活用してください。※準備中
また、寸法線には端部の記号(斜線・矢印・黒丸)や数字の位置など、描き方にいくつかバリエーションがあります。寸法の書き方は別の記事でさらに詳しくまとめているので、あわせてご覧ください。※準備中
各部屋の中央あたりに室名を書きます。「リビング」「寝室」のような名前に加えて、課題によっては広さ(○帖、○㎡)も書き添えます。

文字の大きさは図面全体でそろえましょう。部屋ごとにバラバラだと、それだけで雑な印象になってしまいます。
文字と言っても製図フォントがあります。他にも大きさを揃える方法などありますのでこちらの記事を参照して下さい。※準備中
最後に、方位記号(北を示す矢印)、図名(「1階平面図」など)、縮尺(「S=1/100」など)を入れて完成です。
この3つは忘れやすいうえに、抜けていると確実に指摘されます。提出前のチェック項目に入れておくと安心です。

減点されないための平面図のルール
手順どおりに描いても、ルールを外すと「読みにくい図面」になってしまいます。ここでは特に指摘されやすい3つに絞って紹介します。
線の種類と太さ
平面図で使う線は、ざっくり分けると次のとおりです。
| 線の種類 | 太さ | 使う場所 |
|---|---|---|
| 実線 | 太線 | 切断された壁・柱 |
| 実線 | 中線 | 建具、階段、外構など見えている輪郭 |
| 実線 | 細線 | 家具・設備、寸法線、ハッチング |
| 破線 | 細線 | 上部にあるもの(吹抜け、高窓など) |
| 一点鎖線 | 細線 | 通り芯 |
迷ったら「切れているものは太く、見えているだけのものは細く」と思い出してください。線の種類と太さは立面図・断面図でも共通の考え方なので、別の記事でまとめて詳しく解説する予定です。
よく使う建具記号
建具は、種類ごとに描き方が決まっています。最低限おさえておきたいのは、片開き戸、両開き戸、片引き戸、引違い戸、引違い窓、はめ殺し窓(FIX窓)あたりです。

建具記号はほかにも種類が多いので、一覧と開き勝手の読み方は別の記事で詳しく紹介します。
寸法の入れ方
寸法は、図面の外側にまとめて入れるのが基本です。図面の中に寸法線が入り込むと、部屋の中が線だらけになって読みにくくなります。
また、寸法の合計が全体寸法と一致しているかは必ず確認してください。細かい寸法を足したら全体と合わない、というミスは本当によくあります。
床の仕上げを表すハッチング【主にCAD】
CADで平面図を描く場合は、床に模様(ハッチング)を入れて仕上げ材を表すことがあります。部屋ごとに床の素材がひと目でわかるので、図面の伝わりやすさがぐっと上がります。
手書きの場合は手間がかかるので、省略するか、水回りなど一部だけに入れることがほとんどです。どこまで描くかは課題の指示を優先してください。
よく使われるのは次のような表現です。
| 床の仕上げ | ハッチングの表現 | よく使う部屋 |
|---|---|---|
| フローリング | 細い平行線 | リビング、寝室 |
| タイル | 格子状の線 | 浴室、玄関、トイレ |
| 畳 | 畳の割り付け線 | 和室 |
| コンクリート・モルタル | 細かい点 | 玄関土間、外構 |
ハッチングは線が多くなるので、細線や薄い色で入れるのがコツです。濃く入れると壁や建具の線が埋もれて、かえって読みにくくなります。

手書きで平面図を書くときのコツ
下書きは薄く、仕上げで濃く
手書きの場合、最初から濃い線で描くのはおすすめしません。①〜⑦までは薄い線(2H〜Hくらいの芯)で下書きし、全体の位置が合っていることを確認してから、太線・中線で仕上げていきます。
消しゴムで濃い線を消すと跡が残りやすく、紙も傷みます。提出前日にそれをやると、かなり焦ります。
紙を汚さない描く順番
手書きで意外と大事なのが、紙の上で手を動かす順番です。右利きなら、上から下へ、左から右へ描き進めると、描いたばかりの線を手でこすらずにすみます。
手の下に紙を1枚敷いておくのも効果的です。鉛筆の粉で図面が全体的に黒ずむのを防げます。
定規などを動かす際は持ち上げて移動させましょう。黒ずみの原因になります。
そろえておきたい製図道具
手書きの製図では、最低限次の道具があると作業がぐっと楽になります。
- シャープペンシル(0.3mmと0.5mmの2本)
- 三角スケール
- 三角定規・勾配定規
- テンプレート(円や建具記号を描くもの)
- 字消し板と消しゴム
- 製図用ブラシ
決して安い金額ではないですが、なくさない限りずっと使える物たちです。1級建築士など将来的に資格を取る際の図面制作でも使用できます。
CADで平面図を書く場合との違い
手順は同じ、レイヤー分けが加わる
CADでも、描く順番は手書きとほとんど変わりません。通り芯から始めて、壁、開口部、建具、寸法……と進めていきます。
大きく違うのは レイヤー(画層) の存在です。通り芯、壁、建具、寸法などを別々のレイヤーに分けて描くことで、あとから線の太さや色をまとめて変えたり、一部だけ表示・非表示を切り替えたりできます。
また、CADには手書きのような「下書き→清書」の工程がありません。最初から仕上がりの線で描き、線の太さや色はレイヤーごとの設定でまとめて調整します。この記事の画像は手書きの流れに合わせて途中まで薄い線にしていますが、CADでは①の時点から完成と同じ線で描いていくイメージです。
JW_CADでの描き方は操作解説ページへ
JW_CADで実際に平面図を描く操作は、別のシリーズで画面を見ながら解説していきます。この記事の10ステップを頭に入れておくと、操作の意味がずっと理解しやすくなるはずです。
よくある質問(Q&A)
- 通り芯はどこから引けばいいですか?
-
図面の左下を起点にして、横方向・縦方向に順番に引いていくのが一般的です。紙の端ぎりぎりから始めると寸法線や図名を入れるスペースがなくなるので、周囲に余白を残してから配置を決めましょう。
- 壁の厚みはどれくらいで描けばいいですか?
-
構造によって変わります。1/100なら、木造で120〜150mm、RC造で150〜200mmくらいが目安です。課題で指定がある場合は、そちらを優先してください。
- 1/100と1/50では、描き込みはどう変わりますか?
-
1/50になると、壁の仕上げ(下地や仕上げ材の層)、建具の枠、家具の細かい形まで描き込むのが一般的です。1/100では、壁は厚みを示す2本線程度でかまいません。縮尺ごとの違いは別の記事で詳しく解説します。
- 手書きとCAD、最初はどちらで練習するべきですか?
-
授業で手書き製図がある場合は、まず手書きで描く順番を体に覚えさせるのがおすすめです。手順が身についていれば、CADに移っても「次に何をすればいいか」で迷わなくなります。
- 平面図を描き終わったら、次は何を描けばいいですか?
-
立面図や断面図は、平面図をもとに描きます。平面図の通り芯や開口部の位置をそのまま使うので、平面図が完成してから取りかかるのが効率的です。
まとめ
平面図は「通り芯→壁→柱→開口部→建具→階段→設備・家具→寸法→室名→方位・図名・縮尺」の順に描けば、途中で迷うことはほとんどなくなります。
最初のうちは時間がかかって当然です。何枚か描くうちに手が順番を覚えて、気づけば下書きの線がずれなくなっているはずです。
次は、この平面図をもとに建物の外観を描く「立面図」です。描く順番とルールを同じ形でまとめているので、続けて読んでみてください。


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