「就職しようと思ってるけど、院に行ったほうがいいのかな…」
「周りが院進するって言い始めて、なんか焦ってきた」
建築学科って、就職か院進かで迷う人が本当に多いんですよね。
学校によっても大きく異なりますが、私の学校では圧倒的に就職が多かったです。でも進学の方がメリットが多かったりします。そうなってくるとどっちがいいか余計わかりませんね…
しかも、この選択を間違えると就活のスタート時期・ポートフォリオの戦略・なれる職種の幅が全部変わってきます。
この記事では、実際の建築学科在籍の私の視点から就職・院進それぞれのリアルなメリット・デメリットを正直に解説します。
「自分はどっちに向いてるか」を判断するヒントが見つかるといいですね!
建築学科の「院進・就職」の割合、実は大学によって全然違う
まず最初に、大前提として知っておいてほしいことがあります。
建築学科の院進・就職の割合は、大学のタイプによって大きく異なります。
| 大学のタイプ | 進学割合 | 就職割合 |
|---|---|---|
![]() 国公立・難関私立 | 60~80%以上 | 20~40%以上 |
![]() 一般的な市立・中堅大学 | 10~30%以上 | 70~90%以上 |
難関大では「院進が当たり前」の空気がある
国公立や難関私立の建築学科では、クラスの過半数が院進を選びます。
「なんで院行かないの?」という空気が生まれやすいのも事実で、就職を選ぶほうが少数派になるケースも珍しくありません。
そもそもレベルが高い大学のため、大手設計事務所に入るなど就職レベルの必然的に上がります。
学部卒より院卒を取る企業は多いため、難関大学では院進を選ぶと思われます。
ただし、これはあくまで“その大学の中での”常識”です。
日本全体の建築学生で見れば、学部卒で就職する人のほうが多数派であることは覚えておいてください。
大事なのは「自分の大学の常識」だけで判断しないこと
どちらが正解かは、あなたが将来どんな建築の仕事をしたいかによって変わります。
周りの雰囲気や大学の”常識”に流されず、自分のキャリアから逆算して考えることが大切です。
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就職・院進、それぞれのリアルなメリット・デメリット
では実際に、就職と院進それぞれの中身を見ていきましょう。
まずは全体をざっくり比較した表から確認してみてください。
| 比較軸 | 学部卒で卒業 | 大学院進学 |
|---|---|---|
| 収入開始 | 早い 学部卒業後すぐ | 遅い 学部卒業後 |
| 生涯収入 | やや低くなりやすい | 企業によって高くなりやすい |
| 目指せる職種の幅 | 施工管理・営業・設計など幅広い | 設計・研究職に強い |
| 大手設計事務所への道 | 難易度が高い | 比較的入りやすい |
| 自由な時間 | 早めに社会人生活スタート | 研究・制作に打ち込める2年間 |
| ポートフォリオの質 | 学部課題の完成度で勝負 | 院での作品を加えられる |
| 学費・生活費 | かからない | 2年分の費用が必要 |
学部卒で就職するメリット
① 収入を早く得られる
同級生が大学院に進む2年間、あなたはすでに社会人として給料をもらいながら経験を積んでいます。
新卒の平均月収は企業によって異なりますが、2年間で数百万円単位の収入差が生まれることになります。奨学金の返済を抱えている方や、早期に経済的な自立をしたい方にとっては、これは非常に大きなメリットです。
また、社会人としてのスタートが早い分、昇進・昇給のタイミングも院卒より早く訪れるケースがあります。「同い年の院卒が入社してきたとき、自分はすでに2年のキャリアを持っている」という状況は、思った以上に大きなアドバンテージになりますよ。
② 施工管理・ハウスメーカー・デベロッパーなど、幅広い選択肢がある
「設計だけが建築の仕事じゃない」ということは、社会に出るとより強く実感します。
たとえば、ゼネコンの施工管理職は、学部卒で入社した後に現場監督として大きな建物の建設に携わることができます。設計図を「実物」にしていく醍醐味は、設計事務所では味わえないものです。
ハウスメーカーの設計・営業職やデベロッパーの開発職なども、建築の知識を活かしながら幅広いキャリアを歩める選択肢です。これらの業界は学部卒を積極的に採用しているため、就活での選択肢が広がりやすいというメリットもあります。
就活を実際にしてみてほとんどが私の大学では施工管理の求人が非常に多かったです。今の社会問題にもなっている人材不足が露骨に表れていました。
②-2 おまけ情報
私の大学だけだったかもしれませんが、学部卒でも大手企業に入ることが得意な大学が存在します。
大手ゼネコンである清水建設などは普通の過程を経ての入社は大変ですが、自分の大学のOBが沢山いる場合、OB選考として入れる場合もがあります。
自分の大学の先輩は今まで何処に就職したのか調べるのも重要かもしれません。
③ 早く実務経験を積んで、現場で成長できる
建築の仕事は、学校では学べないことが山ほどあります。
実際、入社直後は「全く仕事が理解できない」という状態からスタートするのが普通です。しかし、多くの企業では新入社員向けの研修や先輩がマンツーマンで教える現場教育の期間が用意されています。つまり、「働きながら、給料をもらいつつ実務を学べる」環境が整っているのです(もちろん、自発的に勉強する姿勢は必須ですが!)。
施工管理であれば、職人さんとのコミュニケーション・工程管理・安全管理・コスト管理など、現場でしか身につかないスキルが次々と求められます。これらは早く経験した分だけ、確実に自分の力になっていきます。
「本で読んだ知識」と「現場で体得した経験」では、5年後・10年後のキャリアに大きな差が生まれます。「早く社会に出て、現場で一人前になりたい」という方にとっては、学部就職は最善の選択と言えるでしょう。
学部卒で就職するデメリット
① 大手組織設計事務所への就職は難しくなりやすい
日建設計・日本設計・三菱地所設計・NTTファシリティーズなどの大手組織設計事務所は、採用の大多数が院卒です。学部卒の採用枠がゼロではないものの、倍率・競争率は非常に高くなります。
「いつか大手設計事務所で設計の仕事がしたい」という明確な夢がある方にとっては、学部就職はその夢への道を狭めてしまうリスクがあることを、正直に伝えておきます。
② ポートフォリオの完成度で不利になることがある
設計職・デザイン職の採用では、ポートフォリオ(作品集)が選考の核になります。
院生は学部時代の課題作品に加えて、修士設計という集大成の作品をポートフォリオに加えることができます。テーマの深さ・表現の完成度・プレゼンのボリューム、どれを取っても修士設計は学部課題とは別次元のものになりやすいです。
学部卒で設計職を目指す場合は、在学中の課題・卒業設計をいかに高いクオリティで仕上げるかが、院生との差を埋める唯一の手段になります。
③ 「やっぱり院に行けばよかった」という後悔が出ることも
就職してから数年経って、「もっと設計を深く学んでから社会に出ればよかった」と感じる人は、一定数います。
特に設計職に就いた後、周囲の院卒同僚との設計力・表現力の差を感じたときにこの後悔が出やすいようです。社会人になってから大学院に通う「社会人大学院」という選択肢もありますが、仕事との両立は容易ではありません。
「設計の仕事がしたい」という気持ちが強いのであれば、院進という選択肢を安易に捨てないことをおすすめします。
院進するメリット
① 大手設計事務所・組織設計への道が開けやすい
繰り返しになりますが、大手設計事務所・組織設計事務所を目指すなら、院進は非常に大きなアドバンテージです。
採用担当者の目線で言えば、「院まで進んで設計を学び続けた人材」は、設計への本気度・専門性の高さを示すひとつのシグナルになります。単純なスペックの比較だけでなく、「この人はどれだけ本気で設計と向き合ってきたか」という観点で見られる場面も多いです。
大手を本気で狙いたいなら、院進は「保険」ではなく「戦略」として捉えてください。
② 設計・研究に集中できる2年間がある
学部時代の課題は、カリキュラムの制約やスケジュールの中でこなすものがほとんどです。バイトをしている人ならなおさらでしょう。一方、大学院での研究・修士設計は自分でテーマを設定し、より深く・自由に建築と向き合える時間です。
「本当に自分がやりたい建築とは何か」を問い続けながら作品を作り上げる経験は、就職後のキャリアにも確実に生きてきます。社会に出てしまうと、まとまった時間を純粋に「建築の探求」に使える機会はほとんどなくなります。その意味で、大学院の2年間は人生でも非常に希少な時間です。
自分にあった就職先がない・分からないといった就活の迷子者こそ大学院に行った方が良い
とアドバイスを先生に受けたことがあります。(笑)合ってるか分からない状態で就職するより、2年の猶予を貰える院生は魅力的ですね!
③ ポートフォリオに修士設計という”核”が加わる
就活において、修士設計はポートフォリオの最大の武器になります。
学部の卒業設計よりもさらに深くテーマを掘り下げ、表現も洗練された修士設計は、選考官に強いインパクトを与える作品になりやすいです。「この学生は本当に設計と向き合ってきたんだな」と伝わるポートフォリオは、書類選考・面接を通じて大きな差別化になります。
④ 就職後の給与・待遇が院卒優遇になる場合がある
企業によっては、院卒と学部卒で初任給に差が設けられていることがあります。
(大半が設けられています。)
たとえば大手ゼネコンでは、院卒のほうが初任給が数万円高く設定されているケースも。数万円といっても平均で4万円程度です。
ですが、毎月4万なので、1年で48万円も差が生まれることになります。
1か月分ちょっとを毎年余分にもらえる計算です。
さらに、一般的に企業は月給に加えて「ボーナス(賞与)」が支給されます。ボーナスも基本給をベースに「◯,◯か月分」と計算されるため、実際の年収差は60~70万近くになるケースが多いです。
2年間の収入ロスはあるものの、院卒優遇の給与体系の企業に入れば、長期的には逆転するケースも十分あります。
進学を検討している場合は、志望企業の給与体系を早めに確認しておくと良いでしょう。
⑤ 進路変更・視野拡大の時間が生まれる
「学部では設計一本で考えていたけど、院で研究してみたら都市計画や環境工学の面白さに気づいた」というケースは珍しくありません。
院進することで、自分の興味・適性をより深く知る時間が生まれます。学部卒で就職してしまうと、この”余白”はなかなか作れません。まだ進路に迷いがある方にとっては、院進が「2年間の真剣な自己探求の場」になり得ます。
院進するデメリット
① 収入開始が2年以上遅れ、学費・生活費がかかる
院進の最大のデメリットは、やはり経済的な負担です。
ただえさえ、大学4年間で約1000万円はかかっています。
※一人暮らしで私立の建築大学に4年間在学していた場合の平均金額
国立大学の場合、大学院の学費は年間約53万円(標準額)。私立大学では年間100万円を超えることも珍しくありません。さらに生活費も加えると、2年間で数百万円単位の支出になります。
奨学金・TA(ティーチングアシスタント)・アルバイトなどで賄う方も多いですが、金銭的な計画は院進を決める前にしっかり立てておく必要があります。
② 研究・修士設計と就活が完全にかぶる
院生の就活は、決して楽ではありません。
M1(修士1年)の夏〜秋にインターンシップ、M2(修士2年)の春〜夏に本選考が集中します。この時期、修士論文・修士設計の制作と就活が完全に並行することになります。
「研究が佳境なのに、エントリーシートを書いている時間なんてない…」という状況は、院生の就活あるあるです。学部生の就活と同様、計画的な準備と時間管理が非常に重要になります。
③ 「なんとなく院進」では2年間を無駄にしてしまうリスクがある
これが院進の最大の落とし穴です。
「就活が怖いから、とりあえず院に逃げよう」「みんなが行くから自分も」という消極的な理由で進学すると、2年間で得られるものが大幅に少なくなります。
先程、迷ったら大学院がおすすめと記載しましたが、適当に行っていいというわけではありません
研究・修士設計に本気で取り組まないまま2年が過ぎると、ポートフォリオも就活での話のネタも、学部卒の頃とほとんど変わらない…という最悪のケースになりかねません。
院進を選ぶなら「何のために2年間を使うか」を明確にしてから進むことを、強くおすすめします。
迷ったときに考えてほしい、たった1つの軸
まだ迷っている方に、ひとつだけ質問させてください。
「5年後・10年後、どんな建築の仕事をしていたいですか?」
就職か院進かという選択は、あくまで手段です。大切なのは、その先にある「どんな建築人生を歩みたいか」というゴールのほうです。
たとえば、
- 「有名建築家の事務所でバリバリ設計したい」→ 院進でポートフォリオを磨く道が近道かもしれません
- 「大きなプロジェクトを現場で動かしたい」→ 学部卒でゼネコンに入り、早く経験を積む道が合っているかもしれません
- 「まだ正直わからない…」→ それなら院進で2年間、もう少し建築と向き合う時間を作るのもひとつの答えです
「周りが院進してるから自分も」「なんとなく就職かな」という消極的な理由だけで決めるのは、できれば避けてほしいと思います。この選択は、あなたのキャリアに直結する大事な分岐点です。
もちろん、今すぐ完璧な答えを出す必要はありません。でも、「どんな建築の仕事がしたいか」という問いだけは、頭の片隅に置いておいてください。
まずは建築の業界を知ろう
そして、できるならまずは職種調査から始めましょう。「やってみたい!」そんな単純な気持ちから始めて大丈夫です。むしろいいことです。調査してみて自分に合ってるのがなさそうなら院に行くことを検討すればいいだけの話です。
まとめ
この記事のポイントを振り返ります。
- ✅️1 院進・就職の割合は大学によって全然違う
→自分の”常識”だけで判断しないことが大切
- ✅️2 大手設計・組織系を目指すなら院進が勇気になる場面が多い
- ✅️3 施工管理・ハウスメーカー・現場志望なら学部就職も十分あり
→早く実務経験を積める
- ✅️4 「なんとなく」の選択は避けて、キャリアから逆算して考える
- ✅️5 迷ったらまずは業界そのものを知ろう
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